日記

日記など

新年明けまして

いまでも、こう、なんとなく建ってる家を仰ぎ見て、街を歩いてる人たちを見て、洗面所でしゃがんだ時にちょうど目線にある水垢だらけの石鹸うけとか、そういうのを見て、なんこれ、と思う。そのまま立ち上がって、鏡に映る自分を見てやっぱり、なんこれ、と思う。地球で、人が、自分が、怒ったり笑ったりして生きてるのを考えて、なんこれ、と思う。こんな広い舞台に、放り出された自分がいて、生活して、誰かと出会って、話して、とかやってる。そういう感覚が、まだ新鮮なまま、瞬きのあいだにある。苦しいこととか悲しいことって、この舞台で、もしかしたらすごく小さくて瑣末なことかもしれない、と思う。でも、小さくてもちゃんと苦しくて悲しいから、手のひらに取り出して、隙間のほこりとか、擦れた跡とか、突起とか、色が禿げてるとことか、ちゃんと見て、なんこれ、と思えるようになったらいい。

人が考えてること、思ってること、そのままの濃度で分かるのって、その人しかいなくて、それってとんでもないことなんじゃないかってときどき思う。こんな広い舞台で、私だけが知ってる私のことが、まあ確かにあって、そりゃあ好きな言葉とか嫌な気持ちとか、いろいろみんなあって、それらを抱えて生きてることを思うと、なんだかすごいことに巻き込まれてるって思う。いつか、どれかを、私が思ったそのままの濃度で、取り出して、誰かに渡せる日がきたらいい。それを、受け取ってくれる人がいたら、それはもう、ここにあるもの全部抱きしめて喜んでいいんじゃないかって思う、新年。