日記

日記など

就活についてとるにたらないこと

就職活動中、卒業生が書いた内定報告書をよく読んでいた。最終面接について、何月何日何時にどこでやったのか、面接官は何人いたのか、面接前に準備したこと、感想、反省などなどの項目がある。そのうち、私が血眼になって見ていたのは「面接で聞かれたこと」だ。その場で聞かれたことに、その場ですぐ考えて答えるなんて無理な芸当だ。ChatGPTだって考える時間が多少ある。緊張しいな凡人にできるのは、想定できる質問の数を増やすことなのだ。そういうわけで、私は「面接で聞かれたこと」の箇条書を片っ端から写真に撮っていた。「学生時代がんばったこと」「入社後に挑戦したいこと」「座右の銘」「尊敬する人はだれか」......「あなたの1番の友達について教えてください」......1番の友達を、教える......面接官に!驚愕した。教えたところでなんだ。それってもう一種の作文能力と、それをあの緊張感のなかスラスラと言うことができる肝の座り具合にかかってくるのではないか。そういえば、と、あるツイートを思い出した。同様の質問をされ、友人について語っていたらだんだんと感極まり最後は泣きながらその友人が大好きだとまとめたら、面接官におおいに微笑まれ、さらに内定をもらった、という旨のツイートが話題になっていた。なるほど、人柄の良さと友人を想う気持ちがある程度伝わればいいのかしら。しかし、知らない人に対していちから説明するのって難しくないか。出会いからダラダラと話し始めて、いざ我々の友情がきらめく感動の場面というところで、「分かりました、もう結構です」と言われた日には立ち直れない。普通に落ち込む。これは聞かれたら困るぞということで、緊張しいな凡人である私は、答える内容を考えておくことにした。出会いから語る時間はないだろう。ある一場面がいい気がする。悩んでいた私に寄り添ってくれてとても心強かった、という話にしよう。もうすでに架空の話であるが、気にしない。悩み相談だけでは弱い、と思い架空の友人には泣いてもらうことにした。その場で私は泣けないし。私が悩み相談をしたら泣きながら寄り添い励ましてくれました。ウーンありきたりだな。印象に残るような多少のウケ所が欲しくなってくる。ウーンウーンと悩む。......そうだ、と、ある考えが浮かぶ。これは名案だぞ。多少無理があるかもしれないが、これくらいなら許容範囲だ。なにより、現実は創作よりずっと奇想天外でディティールが豊かなのだから......よしよし、いけるぞ。......あなたの1番の友人について教えてください。はい、私が悩んでいた時に相談にのってくれた友人がいます。 私が悩みを話すとその子は泣きながら私の気持ちに寄り添ってくれました。それだけでもう救われたような気持ちだったのですが、その子本当に大泣きで(大袈裟に目を見開きながら)、鼻水を垂らしていて。しゃぶしゃぶ屋さんで相談したのでテーブルの上にはもちろんしゃぶしゃぶのタレがありますよね。その友人の鼻水が、しゃぶしゃぶのタレに浸かってたんです(驚きの顔)。それで私、鼻水のしゃぶしゃぶだって思って(大ウケ)。悩みもどうでもよくなってしまったんです。彼女はすごく大切な友達です。......就職活動が終わった今、冷静になるととんでもない話なのだが、聞かれたらこのように答えるつもりでいた。もちろんそらで答える練習もした。これが、どうしたって実際の友人の顔で場面が浮かぶのだ。しょうがない、そういうものだ。さらに、面接の日が近くなると、このとんでもホラ話を反芻し過ぎたあまり、本当にあったことのような気までしてきていた。そういえばこないだ鼻水をしゃぶしゃぶしながら泣いてくれたな......うれしかったなアレ......。