日記

日記など

ヘイユーのこと

以前、随筆の賞レースに出したものです。 小学三年生の夏休みが明けると、クラスの女の子の一人称が「あたし」になっていた。ついこの間まで「ゆうかは」などと言っていたクラスメイトが、すました顔で、まるでずっと前からそうであったように「あたし」と口…

アップルパイの焼き方

チェーンのケーキ屋で3年間アルバイトをしている。楽も苦もなく、ときどきケーキをもらいながら、なんとなく働いている。このケーキ屋に、アップルパイがある。丸いアップルパイを放射状に10等分カットした、シナモンが効いたフィリングがなかなか美味しい、…

欲しいもの、オパール

イカの骨ってオパールになるみたい、ネットで見た。乳白色の棒状のものがきらきらしてる。白のオーロラおりがみと同じ光りかた。このきらきらが生きものの骨だったことがもちろん最高に魅惑的で、もちろんなんだか欲しくなる、元、イカの骨、らしい、オパー…

新年明けまして

いまでも、こう、なんとなく建ってる家を仰ぎ見て、街を歩いてる人たちを見て、洗面所でしゃがんだ時にちょうど目線にある水垢だらけの石鹸うけとか、そういうのを見て、なんこれ、と思う。そのまま立ち上がって、鏡に映る自分を見てやっぱり、なんこれ、と…

就活についてとるにたらないこと

就職活動中、卒業生が書いた内定報告書をよく読んでいた。最終面接について、何月何日何時にどこでやったのか、面接官は何人いたのか、面接前に準備したこと、感想、反省などなどの項目がある。そのうち、私が血眼になって見ていたのは「面接で聞かれたこと…

フグとランデブー

駅から学校へ向かう道中に、フグ料理屋がある。店先の水槽では、死にかけたフグと死んだフグが浮いたり沈んだりしていて、私はこれが苦手なのだが、必ず見てしまう。フグと目が合うと嫌だから、仕方なく口を見る。すると、生白い半開きの口が無数に浮き上が…

小川洋子先生の朗読会に行った話

エッセイ『博士の本棚』に、朗読会を開催したことについて書いてあった。ふと思い立ち、『小川洋子 イベント』と調べると、なんと1ヶ月後に岐阜で朗読会と対談会があるという。先生と交流がある物理学の教授との対談について、「小川洋子さんの飾らない普段…

スノードーム熱海

この夏は熱海へ行った。思い返すと全てがぼんやりと白みがかっていて、微かな奇跡みたいな香りに包まれている。 あるスノードームを考える。スノードームで、まず目につくのは弧を描く海と砂浜だ。誰もいない砂浜には、静かに波が寄せている。それに沿うよう…

プロミシング・ヤング・ウーマン

『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020) Twitterでよく良作として名前が上がっているの見かけたため、あらすじも読まず、全くの事前情報なしで観賞。『前途有望な若い女性』というタイトルから、クールな女性がキャリアを重ねていく痛快サクセスストーリ…

220515

病院へ行く。そういえば病院、というか診察が心の底からきらいだったと思い出すみたいに、また心の底からきらいだと思う。いつ頃からですか?どんな風に?例えば?などなど聞かれるともうてんでダメね。背骨から力が抜けたみたいな気持ちで、それと連動して…

220514

9:10に家を出ないといけないのに9:05に起きる、というか叩き起こされる。寝坊耐性がないためとんでもなく焦った。ファミマのいちご氷バーがおいしい。屋台で売られているイチゴ味のかき氷を、屋台感を損なわない程度に最大限ウマくした氷菓最善解である(種別…

6分の1

先月、あまりにも目が痛かったので眼科へ行った。眼科でまぶたをひっくり返されるたびに、目玉が飛び出るのでは、と不安になる。 その日、ドライアイの検査のために初めて涙の量を測ってもらった。リトマス紙のようなものを目のふちに貼られて5分待つ。鏡を…