日記

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プロミシング・ヤング・ウーマン

『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)

Twitterでよく良作として名前が上がっているの見かけたため、あらすじも読まず、全くの事前情報なしで観賞。『前途有望な若い女性』というタイトルから、クールな女性がキャリアを重ねていく痛快サクセスストーリーを勝手に想像していたので、心の準備が出来ておらず、おもわぬ弾丸をくらってしまった。

画面は終始明るくポップな色合い。イマっぽい音楽。小気味よい会話。そして、同意なき性行為によって命を絶った『前途有望な若い女性』。では加害した前途有望な若い男性は?と投げかけるようなタイトル。こういう演出上の“ズレ”、(私に)あまりにも効果的で、だんだんと内臓の具合が悪くなっていくような気持ちで観ていた。不条理を正そうとする主人公に、自分の幸福を選びとって欲しい、と何度も思ってしまう。でも、そう主張するのは、知らぬふりをして事件を葬った人たちと根本的には同じか......。エンドロールを眺めながら、事件のその後を想像せざるを得なかった。レイプの傍観者も加害者も、起こった事実を忘れたいと思うだろう。なんなら忘れて、なかったことにして、新たな人生を生きていくのかもしれない。どんなに魂をズタズタにされても、決して加害者の魂が同じくらいズタズタになることはない。命を賭してやっと加害者の魂に引っ掻き傷をつけられるその不条理さに絶望してしまう。ゆく末を見届けられない復讐がやっと始まるのだ。不条理から、目をそらすことを許さない、誰にも容赦ない映画であった。