日記

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スノードーム熱海

この夏は熱海へ行った。思い返すと全てがぼんやりと白みがかっていて、微かな奇跡みたいな香りに包まれている。

あるスノードームを考える。スノードームで、まず目につくのは弧を描く海と砂浜だ。誰もいない砂浜には、静かに波が寄せている。それに沿うようにして走っている道に、小さな私たちが2人で歩いている。何かを見つめるでもなく、ただ海と砂浜、弧の両端にのぞく緑を眺めて、「眩しいね」と笑っている。その道から伸びる細い坂道を辿ると、所狭しと小指の爪ほどの店が並んでいるのだ。スノードームをひっくり返せば、どこに息を潜めていたのか、多すぎるように思える量のフェイクスノーが世界を覆う。熱海が、白い球になる。小さな私の視界も白く染まる。目を凝らすと、白の隙間から海と砂の色がちらちらと見える。さらにぎゅっと目を凝らすと波で縁取られた海の輪郭が見えてきて、隣で「眩しい」と言う声が聞こえる。幸福と呼ぶにふさわしい時間。